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新型コロナ禍の影響と展望 感染症を寄せ付けない資産価値に軍配

2021年05月26日 不動産レポート

日本の不動産市場の安定性に魅力

 

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府は緊急事態宣言を東京、大阪、京都、兵庫の 4 都府県に3度目を発令。期間は5月 11 日までだが、感染状況によっては、緊急事態の延長だけでなく、今後も第4弾、5弾の緊急事態宣言がありえそうだ。断続的に発令される緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置は、国民が慣れっこになり春の大型連休中の人出は思ったように抑制できなかったことで、今後、爆発的に感染者数が増えることが懸念されている。コロナ前の世界に戻るには向こう1~2年以上を要しそうだ。 
 
 
ただコロナ禍は、その影響を強く受けた人と全く受けてない人も鮮明にした。飲食・サ ービス、観光、航空・鉄道などの業界が直撃を受けたが、スーパマーケットーやドラッグストア、物流、家庭用ゲームといった業界は巣ごもり需要で業績は好調だ。不動産市場を見ても、ホテルや大型ショッピングモールを運用する不動産大手は主力のオフィスビルを含めて痛手を受けている半面、マンションや戸建て住宅、物流施設は好調に推移している。 

 

立地を間違わなければ成功する

 

感染症の拡大に関係なく分譲マンション価格は高止まっている。特に東京都心では、その傾向が顕著になっている。大和ハウス工業が東京・高輪で 2023 年3月の竣工に向けて開発中のマンションは1坪当たり単価が 500 万円という高額帯だが、年内か 2022 年春ごろまでには完売する勢いだ。同社が東京・東銀座で販売中のマンションも坪単価 500 万円を超えるが富裕層や夫婦共働きのパワーディンクス世帯が購入に意欲的のようだ。 

 

 不動産市場を調査する東京カンテイ(東京都品川区)によれば、中古マンションの高騰も著しい。千代田区や港区、渋谷区といった都心部は中古の平均価格が1億円の大台に。中古の億ション化が珍しくなくなってきた。 
 
 
その背景についてはコロナ禍の株高が大きく影響している。昨年のコロナ当初は、株価が急落して富裕層の動きが鈍かったが、株価の上昇とともに購入者が積極的になった。特にマンションは、投資家のマネーの行き所として活発な取引が行われ、物件価格の押し上げに貢献している。「海外勢や不動産ファンドなどが緩和マネーの持って行き場として相対的に安定した収益が見込める日本の不動産に資金を振り向けている」(不動産大手)との声が上がる。 
 
 
一般実需向けのマンションでは、購入検討者の業種・業態によって慎重なケースもあるが、総体的に低金利環境と住宅ローン減税などの政府支援によって積極的に買い求めているようだ。複数の不動産事業者は、分譲事業について次のように声をそろえる。 
 
 
「東京都内や東京圏の一等地は希少価値に対する人気が強い。競争入札でやや割高感のある値段で取得したとしても失敗せずに大半が成功する。狙ってもなかなか出てこない土地は高値掴みと思っても事業として成功している」と話す。 
 
 
土地さえ間違わなければ顧客は付くと強気だ。ただ、今後の感染4波、5波に伴う影響などを見極めることが重要だと楽観視はない。コロナ収束がいつになるかでシナリオが大きく変わってくるためだ。コロナの収束に見通しが立てば実需以上にインバウンド需要が増して活況を呈する。 
 
 
一方で感染が深刻化してしまうとまた状況が違う。東京都や政府が開催にこだわっている東京五輪・パラリンピックが仮に中止になってしまえば特に影響を受けるのが選手村の「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」だ。コロナ影響で 2020 年の開催が延期になり、引き渡し時期が1年延期なるなどの影響がすでに出ていることから販売が止まったままだが、仮に東京五輪・パラリンピックが中止となれば、今後の販売スケジュールにとどまらず、販売済みの解約が相次ぐ可能性を指摘する専門家もいて目が離せない状況だ。 
 

都心ほどマンションに割高感

 

とはいえ、ハルミフラッグの特殊事情を除けば、ネガティブ要素を耳にすることがなく、足もとの東京都内の分譲マンションは買いづらさを和らげるため価格調整に向かうとの見方は少ない。むしろ価格にはまだ上昇余地を残すとの声も関係者から聞かれる。 

 

前述の東京カンテイが 5 月 6 日に発表した 2020 年版の「マンションPER」からもそれがわかる。このPERとは、新築マンションの分譲価格が賃料の何年分に相当するかを調べたものである。調査対象は首都圏 155 駅。築3年未満の事例で最寄り駅から徒歩 20 分以内の物件を調べており、PERの数値が低いほど割安とされ、高いほど割高を意味している。 
 
それによれば、2020 年の首都圏全体では 70 ㎡換算で平均賃料が 25 万 6601 円(前年比2.6%上昇)、平均価格が 7743 万円(同 6.0%上昇)だった。 
 
 
『マンションPER=マンション価格÷(月額賃料×12 カ月)』に数字を当てはめて算出されたPERは 24.69(※対象 155 駅の平均値を記載)。つまり購入額を賃料で回収するには24.69 年かかることを意味する。賃料の伸び率よりも価格の上昇率が大きく上回ったことで2019 年比 0.3 年ほど延びた。 
 
 
PERが高い上位 20 駅(割高感の強い 20 駅)を見ると、都内の人気エリアで占めており、ランキング別では以下の通りである。
 
1 位=東急東横線「学芸大学」(36.00)、価格1億 2,402 万円、家賃 28 万 7,113 円 
 
 
2 位=小田急小田原線「成城学園前」(34.10)、価格1億 460 万円、家賃 25 万 5,653 円 
 
 
3 位=JR 総武線「飯田橋」(33.55)、価格1億 3,253 万円、家賃 32 万 9,145 円 
 
 
4 位=東急東横線「自由が丘」(33.40)、価格 9,983 万円、家賃 24 万 9,073 円 
 
 
5 位=JR 中央線「荻窪」(32.65)、価格1億 64 万円、家賃 25 万 6,845 円 
 
 
6 位=東京メトロ銀座線「外苑前」(32.24)、価格1憶 9,200 万円、家賃 49 万 6,326 円 
 
 
7 位=小田急小田原線「参宮橋」(31.89)、価格1億 1,688 万円、家賃 30 万 5,401 円 
 
 
8 位=小田急小田原線「代々木上原」(31.84)、価格1億 3,597 万円、家賃 35 万 5,875 円
 
 
9 位=東京メトロ日比谷線「神谷町」(31.48)、価格1億 7,435 万円、家賃 46 万 1,576 円
 
 
10 位=東京メトロ有楽町線「東池袋」(30.77)、価格1億 849 万円、家賃 29 万 3,855 円
 
 
11 位=都営地下鉄大江戸線「若松河田」(30.60)、価格1億 375 万円、家賃 28 万 2,589 円
 
 
12 位=都営地下鉄三田線「白金高輪」(30.51)、価格1億 3,387 万円、家賃 36 万 5,683 円
 
 
13 位=JR 中央線「御茶ノ水」(30.45)、価格1億 2,321 万円、家賃 33 万 7,213 円 
 
 
14 位=JR 山手線「渋谷」(30.35)、価格1億 6,863 万円、家賃 46 万 2,946 円 
 
 
15 位=JR 中央線「四谷」(29.81)、価格1億 3,956 万円、家賃 39 万 87 円 
 
 
16 位=都営地下鉄大江戸線「赤羽橋」(29.68)、価格1億 3,739 万円、家賃 38 万 5,740 円
 
 
17 位=JR 山手線「目黒」(29.54)、価格1億 5,623 万円、家賃 44 万 715 円
 
 
18 位=JR 常磐線「金町」(29.35)、価格 6,603 万円、家賃 18 万 7,479 円 
 
 
19 位=東急東横線「代官山」(29.16)、価格1億 7,334 万円、家賃 49 万 5,408 円 
 
 
20 位=東急大井町線「尾山台」(29.03)、価格 7,894 万円、家賃 22 万 6,570 円 
 
 
どの駅のマンションも回収には 30 年もしくはそれ以上の期間が必要だ。割高感トップの学芸大学駅は首都圏平均と比べて 11 年以上も余計に回収に時間がかかる計算だ。もともと人気エリアは、立地性や交通利便性など投資対象としての魅力が高い。3Aエリアと呼ばれる都心の青山・赤坂・麻布では国内だけでなく、海外投資家からの資金も引き付けている。 
 
 
ちなみにPERが最も低い(割安感が最も強い)駅を見ると、1位は東京メトロ南北線の「志茂」(16.96)だった。首都圏平均に比べて賃料換算での回収期間が8年ほど短い。2位は JR 中央線の「八王子」(17.53)、3位がつくばエクスプレス「三郷中央」(17.60)、4位が JR 京葉線「稲毛海岸」(17.86)、5位がゆりかもめ「有明テニスの森」(17.98)となっている。 
 
 

人気エリアはリセールバリューも高い

 

ただ、都心や都区部は、割高感が募っているだけでなくリセールバリュー(再販価値)が高く、値ごろ感が薄れても購入に向かう富裕層が多いのが特徴だ。同社ではその点から、築10 年が経過した中古マンションの「価格維持率(%)」も調べたところ、2020 年のリセールバリューは首都圏全体で 101.9%となった。100%は分譲当時の同じ価値であり、それを上回れば資産価値が上がり、下回れば価値が落ちたことを示す。

 

調査 412 駅のうち 214 駅が 100%以上の資産価値を保っていることがわかった。リセールバリュートップは東急東横線の「代官山」が 164.3%だった。新築当時より6割以上も資産価値が上がっていることになる。新築分譲時に坪 420 万円が 691 万円と跳ね上がっている。2位は東京メトロ南北線「溜池山王」(145.8%)、3位が JR 根岸線「桜木町」(141.2%)と続いた。上位 30 位は JR 山手線の内側や城南地区に集中している。 
 
 
 この1年あまりを振り返ると、新型コロナ禍に晒された 2020 年のマンション市場は、価格の割高感が改善される兆しを見せずに再び力強さを見せているだけにコロナの影響はないと言ってよさそうだ。世界の主要都市と比較して価格・収益性の双方に相対的な魅力がコロナを勝っている。
 
 
以上